蚊取り線香の偉大さを思い知った。神社裏の軒先があるだけのオープンな場所でテントなしで寝たが、蚊取り線香の火がついている間は蚊が全く来なかった。その後、明け方は蚊の襲来は激しい。
浜松市に入る。1号線を大きく離れて県道沿いに進む。
4時間、ずっと真っ直ぐな道を歩くと流石に退屈で耐えられなくなる。必要もないのに、鉄道を挟んだ向かい側の並走する道に、進路を切り替えて歩いたりした。
浜松市内に入ると並木が京都の街並みのように感じた。(写真は撮っていません。)
バナナが11本300円と当時としては破格の安さなのでつい買ってしまった。が、食べきれない。大型リュックを背負い、汚い山男姿で市街地を歩くと自分が異物のような違和感を感じる。
天竜川の近くまで来たところで、神社を見つける。夕方、まだ明るい時分に2人の女の子が生まれたばかりの子猫に水を飲ませていた。うまく飲めずに鼻に入ってくしゃみをしたりしている。目にはまだ目ヤニがついている。触らせてもらうと、子猫の身体は細かく震えていた。
神社の水道をお借りして衣類の洗濯(といっても水洗い)を済ませ暗くなったら直ぐに眠る。
夜に車が止まり懐中電灯の光だけが近づいてきたときは緊張した。管理人さんだった。少し困った風だったが、「火だけは使わないように」とおっしゃって野宿を許してくれた。
夜中の11時頃、猫の声。目が覚めた。夕方の子猫だ。また13kgの荷物を背負い30km以上歩く明日の為に寝ておかねば、と思いつつ、あまりに弱弱しい鳴き声に起き上がった。
膝に乗せて身体を包み込むようにしてやり、シャツとか私の指などを吸わせると鳴き止んだ。これで眠れる。
深夜0時。またミャーミャーと子猫が鳴き始めた。また膝に載せると鳴き止む。しかし今度は膝から降ろすと鳴きだす。
一計を案じて、足裏のマメがつぶれた時用に持ってきていた毛糸の靴下(夏でも必携)で寝床を作ってやった。これで子猫は寝てくれた。
1時。騒がしい。仕方がないので子猫も寝袋に入れてやる。寝返りで踏み殺してはいけない、と神経を使う。まだ歩くのさえぎこちない弱弱しさだ。でも可愛らしくてしかたがない。胸の上に載せて手で支えておいてやるとぐっすり眠りだした。
これで、うつらうつらしていると未明の3時、また騒がしくなってきた。のどの下をさすったり、今までうまくいった方法をすべて試したが駄目。
もしや喉が渇いたか、と水をやるとピチャピチャとよく飲む。
4時頃には蚊取り線香が尽きて、蚊が襲来する。20か所くらい刺された。
(写真の赤丸の部分が子猫)
まだ歩けない子猫を連れて行くのは難しく、手に持って炎天下を連れて行くと熱中症でやられてしまうので連れて行くわけにはいかない。前日の女の子たちが自分たちで飼うつもり、といっていたので任せるしかない、と判断した。
神社のごみ箱から、ポリコップを拾ってきてハサミで切って高さを調整し水を飲みやすくした容器を3つ作り水を入れた。2人の女の子に置手紙「寝床には布か毛糸を敷いて暖かくしてやること。牛乳を1日に何回かに分けて少しずつ与えること」を残して出発の準備を始める。
荷物をリュックに詰め始めると、今まで鳴いていた子猫がちょこんと座り、じっとこちらを見詰めているのがつらかった。たった一晩だか情が移ってしまい、リュックを背負って私が歩き出すと、ミャーミャーと再び鳴きだした子猫の声が耳に残って離れない。
Masa
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